秋の読書月間⑭ 終わりの始まり

朝晩はすっかり寒くなりましたね。気づけば秋か冬か。もうコートがないと夜は出歩けません。

さてさて気が付けば10月も最終日。前半が忙しかった分最近燃え尽き気味でございます。自分で言い出した企画は自分で終わりにしたいと思います。といいつつも徳野先生がネタ帳を書いてくれているのでそれに手を加えるだけですけど。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【最終回】

和真からの手紙を読み終わった和聖は、もう一度谷村さんに目をやる。内容を知っているのかと思ったが、やはり、谷村さんの表情からは何も読み取れない。

手紙に書かれていたことについて考えようとするが、それらは頭の中で点滅するだけで、何も考えがまとまらない。しばらくすると、自分に関係のないことのようにすら思えてくる。それなのに、不安と緊張ばかりが募る。

和聖は残りのコーヒーを一気に飲み干す。コーヒーはすっかり冷えてしまっていて、苦さが際立っていた。

なんだか今の気分にぴったりだと思うと、逆に、今自分がどういう局面に立たされているのかはっきりした。

正直、世界を守るなんて実感がわかないし、自分にできるとも思えない。母さんや真理に危険が及ぶのは避けたい。もちろん自分が『奴ら』に捕まるのも嫌だ。血液を奪われ続ける日々なんて想像もしたくない。

かといって、『奴ら』から逃げ続けることは、いくら谷村さんが守ってくれるとはいえ限界がある。

そう、谷村さんだ。谷村さんを破壊すれば、襲われることも、世界が危険にさらされる心配もなくなる。谷村さんを破壊するだけで・・・。

それは和真が示したように唯一の解決策だった。しかし、和聖は簡単にその手段をとることができなかった。谷村さんは『奴ら』から和聖を守ってくれたし、和真の真実を伝えてくれた。和聖の中で、谷村さんはすでに生きていた。ロボットだが、生きているのだ。

和聖は谷村さんに言う。

「ひとまずどこかに逃げよう。こんど『奴ら』に見つかれば、おそらく逃げ切れないだろう。谷村さんを『奴ら』に渡しはしない。身を隠している間に解決策を考えるんだ。」

USBのことは黙っておいた。

「わかりました。」

谷村さんに異論はないようだ。

どこに逃げるか考えていると、マスターが久しぶりに口を開いた。

「今日はここに泊まっていくといい。もう時間も遅いし、あてもなく逃げるのは危険だ。奥に隠し部屋がある。昔、和真の頼みで作った。使う日が来ないことを望んでいたが・・・折角だ、今後どうするかじっくり考えていけばいいよ。」

「ありがとうございます。恩に着ます。」

確かに疲れを感じていた和聖は、その申し出を断ることはできなかった。

 

隠し部屋へ通された和聖と谷村さんはしばらく何も会話をしなかった。

「私は起きていますので,和聖様はどうぞお休みください。明日からまた大変な日が続くと思いますので。」

「そうか,」和聖は悪いとは思いつつも,もう体力的にも精神的にも限界だった。

「じゃあお言葉に甘えて休ませてもらうよ。」

 

 

「和聖様,起きてください。」

和聖の束の間の休息は終わりを告げた。

 

「どうやらここはすでにばれていたようです。奴らが襲ってきています。幸いこの部屋の位置まではばれてはいませんが,喫茶店が襲われています。いまはマスターがなんとか守ってくれていますが突破されるのも時間の問題です。和聖様,逃げましょう。マスターが地下道への入り口を教えてくれました。」

谷村さんに導かれるまま和聖は地下道へと降りていった。

カツカツと谷村さんのヒールの音が地下道に反響している。敵が追いかえてくる様子はない。

 

もうどれくらい歩いただろうか,暗闇の中,2人は無言のまま歩き続けていた。そういえばマスターは大丈夫だろうか。

ふいに谷村さんが口を開いた。

「和聖様,ここで上がりましょう。」谷村さんはまるで行き先があらかじめわかっていたかのように言った。

「わかった。でもここはいったいどこらへんなの。」

「ここは京都の北のはずれです。私が先に上がってあたりを確認しますので,合図をしたら上がってきてください。」

「でも,」

「和聖様よりは私の方が強いです。それにやつらの狙いは和聖様です。」

谷村さんは静かにはしごを上って行った。

 

10分くらい経っただろうか,暗闇と静寂のせいで正確な時間がわからない。

 

その時だった,地を裂くような轟音が響き渡った。和聖は急いで地上に出た。何もなかった。月明かりに照らされた大地はこの世の果てであるかのようにまっさらな大地が広がっていた。谷村さんは・・・いったいどこへ行ったのだ。あの轟音は何だったのか。

 

結局,谷村さんどころか何一つ手がかりを見つけることは出来なかった。

 

その日はどう帰ったかは覚えていない。会社にもいかず数日間実家でぼーっと過ごした。ひょっこり谷村さんが帰ってくるのではと期待していたが,谷村さんが帰ってくることも奴らが襲ってくることもなかった。

翌日,ふと朝刊に目をやるとあの爆発現場からロボットの残骸のようなものが発見されたが,それは現代の科学技術では到底作りえないようなものであると書かれていた。「谷村さんだ・・・。」和聖はすべてを悟った。

 

 

和聖は飛行機に乗っていた。

父親と話をしようと思った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

さて,最後大分雑に終わらせに行ったなと思われるかもしれませんがこれ以上間延びしてもあれなのでここら辺で終わりにしましょう。

来月はまたなにか企画を考え中です。

 

そういえば今日は全統記述模試でしたね。受験生のみなさまはしっかりすぐに復習しましょうね。

鉄は熱いうちに打て!!Strike while the iron is hot !!